写真集製作クロニクルVol.3 -自費出版の写真集でこだわった4つのポイント-前編
ファースト写真集「NO MATTER ×UK」の写真集製作クロニクルと言いつつ、できあがった写真集の紹介をしていませんでした。というわけで、今回は自費出版ならではの写真集の詳しい解説をしようと思います。
制作した写真集の主な仕様2013年の初夏に英国で撮影してきた写真45点を所収
サイズ:B5横開き
表紙:ソフトカバー仕様
巻きカバー:マットPP加工
全48P:フルカラー
用紙:ヴァンヌーボVホワイト
印刷:超高画質の280線のオフセット印刷
こだわった表紙と背表紙のデザイン
表紙の写真は、個展「NO MATTER × UK」のポスターやDMに使った3匹の羊。
立てかけて置けば、パネル張りした展示用写真のように見せたかったので、タイトルの文字は極力小さくシンプルにレイアウトしました。同様に裏表紙の文字もシンプルにし、もう一つのメインビジュアルで使った3人のエリザベス女王の写真を裏表紙の全面に配置。
柔らかい作品テイストにあわせて、質感の柔らかいソフトカバーを選びました。
こだわったポイント1
印刷機械で製本するため、背表紙の折れ曲がる部分は数ミリずれることがある。ふつうは写真の周りを大きめの白フチで囲って、折り目ぎりぎりに写真の境目がこないようなデザインにするが、表紙には白フチをいれたくなかった。理由は、白フチがあると写真の広がりが消えてしまうから。
表紙と裏表紙のふたつの写真が合わさる背表紙の部分は、多少ずれても気にならないようにはっきりと境界線が入るようなデザインを避け、ふたつの写真が自然に混ざり合うようなグラデーション処理をした。
大幅に予算をオーバーしてしまった巻きカバー
実は当初、巻きカバーをつけるつもりではありませんでした。写真集の製本方法が無線綴じだったため、カタログみたいに見えてしまうのが嫌で印刷の途中で急きょ追加したのです。
この巻きカバー、B5の横サイズ×3倍以上*1という巨大な用紙に加え、マットPP加工をしたためにお値段が高く、はじめに想定してた予算を大きく超えてしまいました。奮発したおかげで、スベスベしたきめ細かい高級感のある表紙に仕上がりました。触ってて非常に気持ち良いです♪
こだわったポイント2マットPP加工とは、紙の表面に白いビニール製の薄い膜を張る加工のこと。そのおかげで表面が上品な非光沢になるのだが、発色が少し低下してしまう。そこで巻きカバーの用紙をワザと光沢のあるコート紙にした。
そのままだと鮮やかすぎて色味がきつく感じるが、マットPP加工後狙いどおりの淡いやわらかい色味に仕上がった。
さて、次回は写真集の中身について紹介いたします。
[後半へつづく]
写真集製作クロニクルVol.4 -自費出版の写真集でこだわった4つのポイント- 後編
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*1:B5サイズの長辺が257mm。表面の巻き返しと表面と背表紙と裏面と裏面の巻き返しを合計した用紙サイズが必要になる。今回は850mm。印刷会社もマットPP加工は通常のクリアPP加工と違って少し難しいと言っていた。